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掌編小説『驚きの車内編』をブログで公開

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台詞は大阪弁で、軽いタッチのコメデイ風に掌編を描いてみました。
異色作品です。
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 平日の午後の車内は、春の陽気を思わせるような、暖かさがあった。
「あんたぁ! なんやのん」
 非難する、女性の声が聞こえた。
 座席でまどろんでいた私はびっくりして、思わず顔を上げた。
 向いの座席側に、黒い眼鏡をかけた小太りの中年女性が立ち、女子大生と思える女性と睨み合っている。確か、若い女性は脚が長くスタイル抜群で、脚を組んで座り、スマートフォンを熱心にいじっていたはずだ。
「脚だして、通行の邪魔になるやんか」
 どうやら、投げ出した脚のつま先が、中年女性の持っていたトートバッグに当たったらしい。
「あやまりもせんと、嫌な顔して。あんた、なんやのん」
 中年女性は、怒りに燃えているようだ。若い女性は唇をゆがませ、不満げなまなざしで、中年女性を見上げている。
 中年女性はため息をつくと、その場から離れて行った。
「うるさい、ババア」
 若い女性の声があがった。
 その声が聞こえたのか、中年女性は踵きびすを返してもどってきた。
「なんやてぇ。もう一回、言うてみィ」
 腹の底から湧きあがるような、ドスの効いた声が飛んだ。中年女性の握りしめたこぶしが、怒りでわなわなとふるえている。
 若い女性も負けてはいない。般若を連想させるほどおぞましい顔つきになり、中年女性を、掬い上げるようにねめつける。
 二人は睨みあったまま、一歩も譲ろうとはしなかった。
 電車が駅に停車して、乗降が始まった。
 若い女はとっさに顔色を変え、ふいに両手で顔をおおった。
 そのとき、若い男が近づいてきた。彼氏のようだ。
「千里、どうしてん?」
「あっ、たっくん。この人、怖いの」
 千里は、甘えた声をだしてむせび泣き、彼氏の腕に縋り付いた。
 たっくんは中年女性を睨みつけ、千里を連れて、別の車両へと移って行った。
 その後姿を呆然と見送る中年女性のトートバッグには、汚れがはっきりと付いていた。

                        <了>

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インディーズ作家の幸田 玲です。自著小説の紹介・雑記などについて語りたいと思います。よろしくお願い致します。

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